一札の事
1、
今度北沼上村地内、字「上坂」掘り抜き、長尾川切り落し候えば、当村の儀は前々より、瀬名村出水、並びに弁才天池水流、
おでんち
御田地用水に仕来り候処、右北沼上村山の敷掘り抜き、長尾川切り落し、水筋違え、瀬名村出水留り候えば、旱損致すべく存じ奉り候。相成る事に御座候はば、これ迄のとおりにて差し置き候よう、仕り度く存じ奉り候。以上。
安永10年正月20日
   駿府上魚町  佐野屋源右衛門殿
鳥坂村
 名主 久左衛門
上  書  覚
御用急ぎ
廻  状
御普請役
早川 富三郎
青島 俊 蔵
南沼上村始め
まか
 我等共儀、此の度浅畑沼へ長尾川掘り抜き落す願の儀につき、見分に罷り越し、明16日、北沼上地内字上坂願いの場所、見分致し候につき、其の村々銘々名主、組頭、百姓代1人ずつ印形持参、四ツ時頃、右場所へ罷り出候よう致すべし。尤も雨天に候えば、見分延引致し候。右の趣其の意を得べく、此の廻状村下請印致し、早々順達、留めより相返さるべく候。以上。
天明元年丑9月15日
御普請役
  青島 俊 蔵
  早川 富三郎
南沼上村
北沼上村
瀬名村
瀬名川村
鳥坂村
 右村々名主中
9月16日雨天御延引
 今日場所見分致すべきの処、外の御用筋これ有り、延引致し候。これに依り旅宿に於いて申し渡し候御用これ有るの間、今日我等方旅宿へ、罷り出らるべく候。此の廻状早々順達、留めより相返さるべく候。以上。
丑9月17日
   早川 富三郎
   青島 俊 蔵
右5ケ村
   名主組頭中
 御用の儀これ有るの間、我等共旅宿へ、先達て申し聞かせ候村役人名前の者、銘々印形持参明25日四ツ時、罷り出らるべく候。この廻状早々順達、留めより相返さるべく候。以上。
丑9月24日
   早川 富三郎
   青島 俊 蔵
右5ケ村
   名主組頭中
松平丹後守領分
駿州安倍郡南沼上村 同領分
名主  三右衛門
   丑39才
組頭  四郎兵衛
    31才
百姓代 左 兵 衛
    50才
同領分
駿州同州同郡北沼上村
名主  太 七
    39才
名主  善右衛門
    52才
組頭  五郎右衛門
    45才
百姓代 七左衛門
    60才
同領分
同州同郡鳥坂村
名主  久左衛門
    52才
組頭  宇右衛門
    33才
百姓代 長左衛門
    41才
領分
同州同郡瀬名川村
名主  新五兵衛
    40才
組頭  平右衛門
    35才
百姓代 五左衛門
    45才
大久保玄蕃守知行所
同州同郡瀬名川村
名主  小右衛門
    55才
組頭  佐次兵衛
    46才
百姓代 源右衛門
    60才
同人知行所
同州同郡瀬名村
名主  惣太夫
    50才
組頭  仁左衛門
    37才
百姓代 彦 八
    67才
 右の通り銘々年つけ仕り、差し上げ候通り、少しも相違御座無く候。以上。
天明元年丑9月25日
三右衛門
善右衛門
太  七
久左衛門
新五兵衛
小右衛門
惣 太 夫
早川 富三郎様
青島 俊 蔵様
ごりかい
1、
私共5ケ村今日御呼び出し願人一同御吟味御座候処、御利解の趣を以つて、尚また願人共と、とくと内談仕り度く存じ奉り候間、明日御日延べ成し下され、明後27日双方罷り出、いずれ取り極めの処、申し上ぐべく候間、何分御日延べ願い上げ奉り候。以上。
丑9月25日
 早川 富三郎様
 青島 俊 蔵様
5ケ村名主印
恐れながら書付を以つて申し上げ奉り候
1、
鳥坂村組頭宇右衛門病気について、代組頭太平次罷り出候。御用向き太平次へ仰せ付けなされ、下し置かれ候よう、御慈悲の御意願い上げ奉り候。以上。
丑九月二十七日
青島 俊 蔵様
早川 富三郎様
鳥坂村
   久左衛門
   宇右衛門
心覚書
1、
同月27日、上土村御旅宿へ参り、願人とかけ合い申し候処、願人より1日御日延べ願い書差し上げ、御聞き届け成され、28日川合村増福寺に於いてかけ合い、心覚書付け、明29日掛け合い申し、口書きつけ、下書きにて差し出し申し候処、双
じゆくだん
方御糺し御吟味御座候処、右5ケ村の難儀の筋申し上げ、何分熟  談は相成らざる段、申し切り候。
 晩に及び候につき、晦日罷り出候処、仰せ付けられ、口書き、並びに請書、並びに入会39ケ村一同、御印形御取り成られ候。右申し上げ候口上心覚え。
1、
39ケ村入会山、村々御呼び出し、御尋ね成られ候は、右穴掘り抜き候て、差し障りの有無申し上ぐべき段、仰せ聞かされ候
まぐさ
まき
処、入会村々申し上げ候は、田草、、薪などの差し障りには、強いて相成り申さず候えども、先年山論に及び、御裁許山絵図御裏印、御尊判御座候。左候えば、右御絵図面と相違仕り候。此の儀重き儀故、何とも私共了簡に及ばず存じ奉り候段、口上にて申し上げ奉り候えば、尤もなる事と、御役人様御答え遊ばされ候て、其の趣御請印御取り成され候。
9月29日出し御回状の写し
此の度願人これ有り、長尾川しめ切り、字坂下の谷、山敷掘り抜き、穴堰仕立て、浅畑沼へ切り落し、試し普請致し候上、差し障りこれ無く候はば、右しめ切り下川敷、其の外沼通り、開発いたし候段、駿府上魚町佐野屋源右衛門願いにつき、見分吟味のため相越し候処、右山の儀は、39ケ村入会、薪、秣取り場、先年争論これあり、御裁許これ有り候場所につき、1と通り相尋ね候儀これ有るの間、組頭、百姓代印形持参、名主1人ずつ、明晦日四ツ時まで、我等が旅宿上土新田まで、遅滞たく罷り出ずべく候。尤も右出入りにつき、場所に関わり候書き物等これ有り候はば、持参致すべく候。此の廻状刻付け致し、早々順達村下請印致し、留めより相返さるべく候。以上。
丑9月晦日酉の中刻これを出す
御普請役
  青島 俊 蔵
  早川 富三郎
右村々名主中
回  状
 其の村々出湧き川、見分の為罷り越し候。明5日4ツ半頃、村役人1人ずつ罷り出で、案内致すべく候。直ちに郷尻へ罷り越し候間、その意を得らるべく候。此の廻状早々順達、留まりよリ相返さるべく候。以上。
丑10月4日
御普請役
  青島 俊 蔵
  早川 富三郎
瀬名村
瀬名川村
鳥坂村
 3右3ケ村 名主中
願人へ懸(掛)け合い候趣書き上げ候。
 5ケ村下書き写し
昨28日川合村増福寺へ罷り越し、願人へかけ合い申し候趣、左に申し上げ奉り候。
1、
北沼上村潰れ地の儀、代金にて請(受)け取り候や、又は弁米にて承知致し候やと、願人申し聞かされ候。
此の儀代金にては望み御座無く候。弁米の儀不承知に候。
1、
川原表の方、高五十石余程とれ有る場所、水腐れに罷り成り、難儀至極に存じ奉り候。此の儀川除け普請等丈夫に仕り候よう、申され候えども、しめ切り川上に相成り、悪水吐くべきよう、御座無く候につき、水腐れ相退くべきよう御座無く候。
1、
穴掘り候土は、何方に置き候やと、私共より相尋ね申し候処、半分は川下、半分は川上へ出し候由、川下の分は沼の内へ、入れ申すべき旨申され候処、沼水内は北沼上村にて、運上沼に御座候につき、土入れの儀、難儀の段申し候。さ候はば、上土新田地に置き申すべき旨、申され候。
1、
南沼上村穴口の藪掘り割り候につき、代金にて請取り候や、藪替えに仕り候やと、申し聞かされ候。此の儀代金にては望み御座無く、藪替えの儀も、場所よき藪御座無く候。
1、
潰れ地の儀代金か、又は弁米、替え地にて請け取り申すべきやと、此の儀三ケ条望み御座無く御座候。
1、
穴掘り候土、並びに藪掘り割り候土、何方に差し置かれ侯やと、相尋ね候処、川原に出し候由、申され候。川原にては満水の節、障りに罷り成り候段、申し候えば、何方に成り共、邪魔に相成り申さざる所見立て、差し置き申すべき旨申され候。近所に障りに相成り申さず候所は、御座無く候段、惣太夫、三右衛門申し候。
1、
表山穴口藪掘り割り、其の上穴掘り抜き候ては、山道もこれ無く、山崩れ候儀も心もと無く、質物等に入れ候節、値段違い難儀の段、三右衛門申し候処、穴開け申し候えば、崩れ候に極まり候儀にもこれ無く、天災にても崩れ候段申され候。山穴開け申さず候はば、崩れ申す間敷き段申し候。
1、
山裏の儀、川掘り切り候えば、作場、猪鹿追いに通路御座無く、満水の節別して難儀仕り候。
1、
沼の方川敷き潰れ地、代金にて請け取り候や、弁米、替え地にて承知候やと申され候。三ケ条共に不承知に候。且つ又地続きに一町八反歩余、用水水引き方御座無く候場所、出来申し候。是れは、用水掛け候よう致し候ては如何と、申され候えども、何分用水掛くべきよう、御座無く候。
1、
瀬名村地内締め切り堤普請致し方、相尋ね申し候処、敷三間、高さ二尺にも致すべき段申され候。此の儀水筋違い、用水湧き水仕らず、難儀の段申し候。
1、
満水の節、居村へ切れ込み候事、何分心もと無く、水難の儀申し候処、願人中申され候は、いずれにも普請いたし、水難これ無きよう、致すべき段申され候えども、此の段不承知に御座候。
1、
水落ち方宜しく候えば、古川敷、堤共に開発成さる由に御座候。此の段堤にては、用水溝、悪水溝等普請、しがら笹に相用い、川原の儀は稲わら干場に仕り、其の外用立て候儀ども、御座候につき、難儀の段申し候。
1、
瀬名川村、鳥坂村の儀は、前々より瀬名村の出水を以つて、田地用水に仕来たり申し候処、水筋違い用水留り、其の上瀬名村へ満水の節、切れ込み候えば、田地残らず川成り、水腐れ仕り、其の外如何様の水難に逢い申すべきや、難儀至極に存じ奉り候。
右の通り昨28日願人と掛け合い申し候処、書面の通りに御座候。以上。
丑9月29日
北沼上村
 名主 善右衛門
南沼上村
 同  三右衛門
瀬名村
 同  惣太夫
瀬名川村
 同  新五兵衛
同 村
 同  小右衛門
鳥坂村
 同  久右衛門
早川 富三郎様
青島 俊 蔵様

5ケ村へ掛け合い候趣書上帳 写し
丑9月29日
昨28日川合村増福寺へ罷り越し、5ケ村者共へ掛け合い申し候趣、左に申し上げ奉り候。
 北沼上村かけ合い
1、
潰れ地の儀代金にて受け取り呉れ候や、又は替え地、弁米にて承知いたし呉れ候や、相尋ね申し候処、右三ケ条共、望みこれ無き段、多七其の外の者共、同様にこれを申し聞かせ候。
1、
川原表の方、五十石これ有り、殊に外の百石にも替え難き地所に候えば、水腐れ致し候儀、難儀の由申し聞かせ候につき、私共申し候は、いずれにも普請致し、水難これ無きよう致し度き旨、申し聞かせ候えば、川除け堤等いたし候ても、水吐き悪しき由、太七これを申し候。
1、
山穴の儀、山代金何程受け取り下さるべきや、相尋ね申し候処、右山の儀は、39ケ村入会にて、御証文これ有り、中々穴開けさせ候事は、決して相成らざる趣、善右衛門、太七これを申し候。
1、
穴掘り抜き候土は、何方へ捨て申し候や、私共へ相尋ね申し候。堤敷に相用い、その余は沼へ落し申し度き段申し候処、沼へは決して相成り申さず、沼水内は残らず北沼上村分故、捨てさせ候儀、相成り申さず候段、権右衛門、太七申し聞かせ候につき、然らば上土新田地なりとも、置き申すべき旨、私共より申し聞かせ候。
南沼上村
1、
穴口藪掘り割り候につき、代金受け取り呉れ候やの旨、相尋ね申し候処、金子は望これ無き由、申し候につき、然らば藪かえにては承知すべきやと、相尋ね申し候処、何分此方望みの藪これ無き旨、三右衛門申し聞かせ候。
1、
潰れ地の儀、代金か又は弁米か替え地か、いずれにて承知申すべく候や、相尋ね申し候処、三ケ条望みこれ無き由、三右衛門申し聞かせ候。
1、
穴掘り候土は、いずれへ出し申すべきや、相尋ね申し候につき、川原方村方邪魔に相成り申さず候所に、置き申し度き旨申し候えば、いずれ邪魔に相成らずと申す儀はこれ無く、南沼上村三右衛門、瀬名村惣太夫、同様に申し聞かせ候につき、然らば暫の内川原に置き、いずれにも仕るべき段、私共両人申し述べ候。
1、
山掘り候ては、山崩れの儀心もとなく、作場、猪鹿追いに通用道にもこまり、其の上質物等入れ候節、値段違い候由、三右衛門申し聞かせ候につき、私共申し候には、万一山崩れ候はば、丈夫の代金遣り侯ては、承知下さるべきや、相尋ね申し候えば、いずれ穴開け候事不承知の由、三右衛門これを申し候。私共申し候には、尤も山穴掘り候とても、崩れ候にも極り申す
まじ
間敷く、穴開け申さずとも、不時天災にて崩れ候儀もこれ有り候えば、穴掘り候とて、崩れ候に定り申す間敷き段申し候えば、穴開け申さず候ては、天災にても、右の山決して崩れ申さず候由、三右衛門申し聞かせ候。
1、
沼の方川敷潰れ地、代金にて受け取り呉れ候や、弁米、替え地にて承知下さるべきや、相尋ね申し候処、右三ケ条共不承知、その上潰れ地は少々に候えども、右地続きに一町八反歩、皆々用水留り候につき、いずれにも相成り申さざよ段、三右衛門申し聞かせ候につき、右一町八反歩用水、掛け候よう致し候ては、承知下さるべきや、相尋ね申し候処、何分用水掛り申さざる段、三右衛門申し聞かせ候。
1、
普請致し方相尋ね申し候につき、川原方堤致し方、水落し方共に、だんだん申し聞かせ候処、何分堤、堰等致し候ても、水筋違い、用水決してこれ無き段、惣太夫とれを申し候。
1、
満水の節、居村へ切れ込み候事、心もとなく、惣太夫申し聞かせ候につき、私共申し候には、いずれにも普請致し、村方へ水難これ無きよう致すべき段、申し聞かせ候えども、其の旨も不承知の由、惣太夫申し聞かせ候。
1、
水落ち方宜しく候えば、古川敷開発成さるべき由、左候ては、唯今までしがら竹堤より切り取り、稲干場等致し、村々重宝に候えば、是れ以つて難儀につき、相成り申さざる段、惣太夫これを申し候。
1、
瀬名川村、鳥坂村2ケ村の儀も、水上村続き故、瀬名村へ切れ込み候ては、2ケ村も水難もこれ有るべく候。並びに用水にも相障り申し候段、申し聞かせ候。
右は昨28日村々へ掛け合い申し候処、書面の通りに御座候。なお又御吟味の上、御答え申し上ぐべく候。以上。
丑9月29日
府中上魚町
  願人 源右衛門
下足洗新田
     市左衛門
同  村
  金主 庄右衛門
府中上ノ店
     林右衛門
川合新田
     与一右衛門
同  村
     与五左衛門
府中 庄兵衛代
  金主 庄左衛門
 青早 富三郎様
 島川 俊 蔵様